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ショスタコービッチのレニングラード [群馬交響楽団]

昨晩は、僕にとっては、今シーズン初めての群響定期を聴きました。

曲は、ショスタコービッチの交響曲第7番レニングラードとグラズノフのアルトサックス協奏曲でした。

ショスタコービッチの作品は、ナマで聴くのは20年近く前でしょうか、サントリーホールと高崎音楽センターで連続して群響が演奏したのを聴いて以来ですね。

あのときは、ロシアの大指揮者のキタエンコが群響を振って、当日としては大変な名演でしたので、オケの性能が格段に向上した今回はさらなる名演を期待してワクワクしながら会場に出かけました。
僕にとっては、ショスタコービッチは、クラシック音楽を聞き始めた最初期に出会い衝撃を受け、一時期はのめり込んだ作曲家です。もちろん、その作品は、ご多分に漏れず第5番でしたが(バーンスタインの旧盤)、すぐに7番レニングラードのLPを買いました。群響にも指揮に来たスヴェトラーノフの指揮ソビエト国立管弦楽団でした。

簡潔に書かれた5番に比較して、7番は、あまりにスケールが巨大で、また、背後に流れるテーマがあまりに重いこともあって、5番のようには親しめませんでしたが、作品の鬼気迫る凄まじさは大変印象に残りました。

当時は、折しもヴォルコフの「ショスタコービッチの証言」という問題作が発表され、僕は、すぐに日本語訳を入手して、読みました。この作品についても、従来言われていた「ナチスドイツとの戦い」という観点だけでなく、「スターリンとの戦い」であるという爆弾発言が記述されていて、僕らにとっても、大変な衝撃だったですが、昨晩の演奏を聴いていると、いずれにしても、人間性に対する破壊と抵抗の音楽であることは、間違いのないところです。

演奏会前に解説をしてくれた渡辺和彦さんは、このレニングラード交響曲を標題音楽と言ってましたが、僕らの研究分野的に言えば、やはり、優れて、表象の臨界に到達した作品であると言えると思いました。

それほど、強く聴衆の心を掴み、引きづりまわし、そして、最後には、何とも言えない、複雑な印象とカタルシスを感じさせてくれる作品と思いました。

特に、フィナーレの最後には、作品の冒頭に演奏された人間の主題と呼ばれる、実に不思議な雰囲気を持つ、骨太のテーマが、回帰し、戦争が勝利に終わるかのごとく、圧倒的なカタルシスを感じさせてくれますが、作品は、ブルックナーの同じ7番のようにそのまま光輝く勝利の音楽として終わるのではなく、最後は、敵襲を報せるような非常サイレンが運命のテーマとして鳴り響く中で、音楽は強烈に閉じられるのです。これは、勝利の音楽では決してないというのが、正直な印象です。ヴォルコフの「証言」は偽書であることが、決定的となったそうですが、彼の音楽は、一筋縄ではいかないという点を世界に知らしめた意味はあったと思います。

仮面の音楽、多重人格の音楽。あの時代を生きた芸術家の苦悩としたたかさが感じられます。そうした意味では、マーラーに似ている思いますが、時代に翻弄されながらも、最後まで、自らの信念を曲げない芸術家という側面も見えてきます。そうした意味では、もしかすると、ベートーヴェンにも近い生きざまであったような気さえします。やはり大作曲家ですね。

さて、演奏ですが、いつも書いていますが、こうした素晴らしい作品のあるべき姿をライブでしっかりとした演奏で聴かせてくれる沼尻指揮の群響に本当に感謝の気持ちで一杯です。

バンダを含めた超大編成オケによる圧倒的な音響はもちろん、すごいのですが、それ以上に叙情的な弦楽器群の美しさに惹かれましたし、低音管楽器群のアンサンブルはタコ独特のほの暗さを醸し出していて、最高でした。

沼尻さんの指揮は、的確にして、無理のない品のよい解釈と思いました。前のマーラー同様、大変、好印象ですね。

演奏会終了後、当地レニングラード出身のチェロ首席奏者のグルチンさんと沼尻さんのトークを聞きました。写真はその様子です!
IMG00040.jpg

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バルビ

ご無沙汰していました。今期が群響の演奏を聴くのが初めてでしたか。私は運良く、4月のオープニングの飯守さん指揮のベートーヴェン6番も、5月定期のスダーンさん指揮のシューベルトも聴くことができました。いずれも好演でした、今回は特に素晴らしいできと感嘆致しました。

来月定期では、前々から非常に期待していた大野さんの登場ですから、これは太田の公演のチケットも、昨日もとめました。

さて、昨日の演奏ですが、私も弦楽器の合奏の素晴らしさに、アレっと思ったのです。あの音楽センターのホールで、昨日はギスギスしたところがあまりきこえない、つややかな合奏に驚きました。何だか、今後の色々な演奏が期待できそうな予感です。

ああいった曲ですから、終末部などは群響の得意とするところで、圧倒的な素晴らしさでした。
by バルビ (2011-06-26 19:45) 

Forte

僕も昨晩、エアチェックのモーツアルト25番、リストのピアノ協奏曲1番、シューベルト4番を聴きましたが、いい演奏ですね。特にシューベルトが気に入りました。

飯守先生の演奏会はワーグナ、ベートーヴェンはもちろんのこと、リストの2番協奏曲をとても楽しみにしていたのですが…。

ショスタコは、荒くなりそうな作品ですが、弦楽器群の正確かつ力強い演奏には、新たな時代の到来を感じさせくれましたね

by Forte (2011-06-26 21:40) 

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